2019年5月に、「日本整形外科学会」「日本腰痛学会」から腰痛診療ガイドライン2019「改訂第2版」が発行されました。第1版は、2011年に発行されていますので、7年ぶりの改定となりました。もちろん腰痛は医療の分野であり、治療行為に関しては医療従事者の範疇であります。だた、 2012年以降近年は、腰痛の症状改善のためには、運動療法は不可欠な分野となり、フィットネスクラブでも腰痛改善のプログラムについて熟知していることは必須と考えます。

2012年の第1版では、腰痛改善のための運動療法は、

・運動療法は、急性腰痛(4週間以内)には効果がないが、亜急性腰痛(4週~3か月)に対する効果は、限定的である。

・慢性腰痛(3か月以上)に対する運動療法は、高いエビデンスがある。

・温熱療法は、急性および亜急性腰痛に対して短期的には有効である。

・運動療法は、腰痛の発症予防に有効である。

としていて、それ以外には

 ・運動不足は腰痛発症の危険因子である。

 ・発症と慢性化には、心理社会的要因が関与している

 ・安静は必ずしも有効な治療法ではない。

の内容も示されていました。

また、運動療法の具体的な種類としては、以下の①~⑧までは示されていました。

①通常の活動的維持(身体的制限があってもそれに抗して通常の活動を行うように勧める)

②柔軟性訓練(ストレッチング)

③ 筋力強化訓練(筋力トレーニング)

④エアロビック(ウオーキングやサイクリング)〔アップライトバイクが良い〕

⑤ アクア(プール内リハビリテーション)

⑥腰部安定化運動 

⑦固有受容促通・強調運動 

⑧ 直接的腰椎体操(Mckenzie法等)

今回改訂のガイドラインでは、

1)急性腰痛に対する運動療法〔発症からの期間が4週間未満〕

急性腰痛に対する運動療法のRCT(ランダム化比較試験:質の高い研究手法)のメタアナリシス(複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析)によると、腰椎関連機能障害や健康状態、患者満足度についても運動療法の効果を認めなかった。腰痛体操と対照を比較した報告では、腰痛、機能障害、QOL、復職に関し、急性期における腰痛体操の効果はなく、通常通りの生活を継続することが唯一の有益な介入であった。

2)亜急性腰痛に対する運動療法〔発症からの期間が4週間以上3か月未満〕

運動療法とプラセボ、あるいは一般的な保存的治療の比較では、運動療法の腰痛に対する中等度の効果や運動療法の復職に対する効果が示された。Cochraneレビュー(治療と予防に関する医療情報を定期的に吟味し、人々に伝えるために、世界展開している組織)では、亜急性期において理学療法を含む集学的生物心理社会学的リハビリテーションは一般的な治療よりも腰痛、腰痛関連機能障害、就労状態に対する改善が期待できるが、質が低い研究に基づいているため、エビデンスレベルは低い。

3)慢性腰痛に対する運動療法 〔発症からの期間が3か月以上〕

 慢性腰痛患者のRCTでは、運動療法が腰椎可動域や機能障害の改善に効果があり、疼痛、運動機能、健康状態、筋力および持久力も改善した。慢性腰痛患者のQOLに関するRCTでも運動療法はQOL改善に効果があった。メタアナリシスでも、慢性腰痛に対する運動療法は疼痛改善に加え、機能障害やQOL改善に効果があった。Cochraneのシステマティックレビューとメタアナリシスでも、慢性腰痛患者の疼痛や身体障害の軽減には理学療法を含むMBR(multidisciplinary biopsychosocial rehabilitation)が効果的であった。

日本における全国的なRCTでは、運動群(体幹筋力強化とストレッチを10回、1日最低2セット)と対照群(非ステロイド性坑炎症群【NSAIDs】内服)を比較したところ、腰痛の強さやFFD(finger floor distance)に差はなかったものの、腰痛関連QOLが運動群で有意に改善しており、国内においても慢性腰痛に対する運動療法の効果が示された。

したがって慢性腰痛に対する運動療法は強く推奨される保存的治療のひとつといえる。

としています。

よって、F.Cのスタッフも継続的に腰痛改善と運動療法に関する論文等に注意を払い、最新の情報を取得し、指導やプログラムに生かしていくことが求められています。

ただ、今回のガイドラインには、前回のように具体的な方法は、紹介されておらず、もうすこし、踏み込んだ、運動療法の内容が欲しかったというのが、正直なところです。

今回の日本のガイドラインには含まれませんが、このところ海外(ACSM、Cochraneレビュー)では注目されている理論があります。

それは、「モーターコントロール理論とエクササイズ」というものです。

モーターコントロール(運動制御)は「運動の幹的メカニズムを統制もしくは指揮する能力」と定義されています。また、「運動するために必要なさまざまな機構を調整する能力である」とあります。

運動制御の「制御」とは思い通りに動かすという意味で、目的とする運動を行うためにどのような脳・脊髄(中枢神経系)の機能が関わっているのか、関節や筋肉の強調した動きが実行されるまでの処理や伝達はどのように行われているのか、運動の課題や環境によってどのような影響を受けるのか、受け取った感覚情報はどのように知覚・認知され運動に結びつくのかなどを考え、現場で評価やアプローチを実施していきます。

運動制御の「運動」とはエクササイズだけではなく、歩く、走る、手を伸ばす、物品を操作するなど、すべてのことを指しています。

「通常の動作はインナーマッスル(ローカル筋)が瞬時、先に作動し、協調的にアウターマッスル(グローバル筋)が働く。腰痛者は、動作時インナーマッスルが作動せず腰部の安定化を図らないまま、アウターマッスルが働くため、腰部の椎間板の線維輪を傷めて腰部痛(ぎっくり腰)を引き起こす。また、腹横筋や多裂筋などのインナーマッスルを賦活することで、アウターマッスルがゆるみリラックス効果をもたらす。」

とされています。

◎インナーマッスル

 腹横筋、多裂筋、腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)

モーターコントロールエクササイズの理論に基づいて、運動療法を行っています。 もちろん 腰痛改善のエクササイズ としても有効です。


膝を曲げた姿勢になり、両手はおへその下にあてる。足は肩幅程度に開く。ゆっくりと鼻から息を吸い込み、お腹を膨らませる。その後、ゆっくりとお腹をへこませて、10秒以上かけて、息を吐き切る。この動作を5回程度繰り返し行う。その後、息を吐きながら、頭をゆっくりと上げ、へそを覗き込むように少しだけ持ち上げて、5秒間キープする。その後ゆっくりと戻る。